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わたしの妄想日誌
第21章 保護者会
 「はい、相沢さん、どうぞ」

 わたしも野川さんも、娘たちが部活動や習い事を終えて帰ってくるまでには、まだ十分に時間がある。十分に時間があるからこうして高田クンの部屋に来ているのだけれど。娘がわたしたちより先に帰ってきたとしても、野川さんとは、保護者会の後おしゃべりしていたことになっている。夫が帰ってくるのはもっと遅い。少しくらい飲んでも、差し支えはない。

 「おお、飲まれますか、いいですね。じゃ、ボクもお相伴にもう一本」

 野川さんが冷蔵庫からもう一本取り出し、高田クンに渡した。

 「じゃあ、乾杯しましょうか」

 三人で缶ビールをくっつけ合う。高田クンの万年床の上で。万年床の周りにも雑誌が散らばっている。

 「尾形先生もそろったらもう一組敷きますから」
 「敷くったって場所がないじゃないの」

 野川さんと二人で、散らかっている雑誌や服を片付け、布団を敷く場所を作った。

 「ああ、ありがとうございます。片付けまでしていただいて。お礼はのちほど、たっぷりさせてもらいますから」
 「やぁね、もう。お礼が欲しくて片付けたみたいじゃない」
 「違いましたか?」
 「もう。一本もらうわよ」

 たばこを吸おうとしている高田クンから、野川さんが一本受け取って口に咥えると、高田クンがマッチを擦って火を付ける。

 「相沢さんもどうぞ」

 高田クンから渡されたたばこを口に咥えて、差し出されたマッチから火をもらう。

 「消えちゃった」

 マッチが燃え尽きた。高田クンはたばこを咥えたまま、今度はわたしのたばこの先から火をもらうと、ふうっと煙を吐き出した。

 「相沢さんもお家では吸われないのでしょ?」
 「吸わないわよ」
 「ふふ。こんなところでたばこをふかしているなんて、不良生徒ならぬ不良母親ですよね」
 「何よ。貴男だって不良教師じゃない?」

 わたしが笑いながら言うと、高田クンも笑った。

 「まあ、そうですかね。あまり悪いことをしているつもりはないのですけど。おかあさん方もそうじゃありませんか?」
 
 野川さんは煙を細く吐き出しながら、面白そうにこちらを眺めている。

 「『むしろよろこんでいる』って言いたいんでしょ? 否定はしないけど。ねぇ?」

 野川さんに相槌を求められる。わたしも否定しないで笑っている。
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