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ーasahiー
第3章 猶予
俺はハタチになり
就職の事を真面目に考えなければ
いけなくなった。
父さんと兄さんは
依然変わらず継ぐ為に
自社への就職を押す…
俺は諦めたようにパンフレットを
ゴミ箱に入れ
もうあの人の事を考えらないようにした。
就職の求人情報が廊下に張り出され
生徒が並び見るなか
俺はふと足を止める。
捨てたパンフレットと同じフライヤーが
張り出されていたからだ。
だめだ…
やっぱりわすれられねーよ…
あの顔にあの声…
忘れるなんてできねーから…
学校がえり姉さん宅に寄った。
「俺ね…父さんの会社ぢゃなくて
行きたいところがある…」
「へぇー、いいとこあったの?」
姪っ子二人にご飯を食べさせながら
俺の話を聞いてくれる。
「前言ってた人がそこで働いてる」
「あ…成る程ね!」
なぜか嬉しそうに笑う姉さんは
「動機はどうであれ
自分からしたい事みつけたなら
やってみたらいいんぢゃない?」
「どーき?」
幼い姪っ子は意味も分からず口にする
「アサヒタンねー好きな人いるんだって」
「唯たんのことー?」
「唯たんぢゃなくて…」
困り顔の姉さん。
唯とは姪っ子の名前。
ちなみにもう一人が彩。
唯(ゆい)彩(さい)
双子だ…ませた3歳児。
「ぢゃぁ彩たん?」
「違うよー」
「修…って名前だよ。」
あ姉さんは一旦考え驚いた顔で聞く
「は?何…男?」
何も言わずに頷いた。
「えーっと…よく分かんないんだけど」
苦笑い気味に聞く姉さんは
冗談でしょ?なんて言わず
俺が話すのを待った。
「あ…んー、一目惚れだと思う」
「乙女の顔して言うな」
と笑われた…。
「そっか、そっか…いいんぢゃない
後は父さん説得して近づければいいね」
あえて詳しく聞いてこない姉さんに
こんなに感謝したのは初めてかも…
「うん…今度父さんに会ってくるよ」
姉さんはタッパーに
出来立てのオムライスとサラダを入れて
帰る俺に持たせてくれた。
「後悔しないように頑張んなよ」と。