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ーasahiー
第7章 不安


何か言う訳でもなく
黙って耳を傾ける修の顔つきは…
恋人の表情ではなく
あの頃のような頼れる先輩だった。


灰が無くなった皿を
目の前に差し出される…
灰を落とすと同時に口を開いた。



「俺…兄さんの事が好きになれそうです。」



完璧に見せてくれていた。
俺の為に…

見ていてくれてた。
俺の事を…

守られていた。
兄さんに…



「同じ様に思ったんですけどね…
俺が辛かった事よりも
兄さんの方が辛そうでした。」



本当の自分を押し殺してまで
俺の為にしてくれていた…。



「分かったんですよね。
お互いの痛みが…」



認められたかったんだ…。



「少しですけどね…
近くなった気がしましたよ。」



修の暖かな手が頭に触れる
優しく包み込むようにして
何度も撫でてくれた



気づけば
頬に一筋の涙が流れ
脳裏には家を出る時の兄さんが浮かんだ。


《弟の恥にならないように》



「俺の兄さんが…兄さんで良かった…」



震える声で最後の言葉を口にすると
溜まっていた涙が次々と流れ出した



「そう思えるようになって良かったな」



とても優しい瞳に見つめられ
不安が消えたのが分かった…



「…ッ…は…い」



涙まみれの顔で笑う俺はきっと…
幼い頃に兄さんの後を
必死に追って走っていた時の様に
純粋で無垢だったと思う。



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