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ーasahiー
第9章 挨拶


数日後俺は兄さんの一件で
顧客に挨拶をしに回った。


祖父ちゃんや父さんが築き上げた関係
これを取り戻す為にも
丁寧な対応を心がけた。



「旭、悪かったな京の事で
忙しくしてしまって」



「いえ、兄さんが間違いに気づいて
やり直そうとしてるんです
これくらいの後始末
どうって事ないですよ」



「助かるよ
お前を跡取りにって京が言ってた意味が
やっと分かってきた」



「まだまだですよ…」



「現に回りも認めているじゃないか
自信を持ちなさい
旭には旭にしかできない事があり
それを私はサポートしたい」



こんな事今までに言われた事があったか?
しょうがない。そう言っていた父さんが?



「少しは…認めてもらえてるんでしょうか?」



「周りがついてきている
それが証拠だろ」



「違います…父さんに」



棚ぼただと周りに言われ
いいとこ取りと嫌みを言われ
そんな俺を…



「今更だな」


大きな声で笑いお茶を口に含むと



「旭に任せて良かったよ
旭だから任せられた
なにより信頼が大切だからな」



「あ、ありがとうございます…」



やばいな…
こんな事いわれるなんて想定外だ…
涙腺が緩み視界がかすむ…



「信頼を築ける旭は凄い
それは旭自身が素直で優しいからだろ
父さんはちゃんと知ってる
最初はあんな言い方したのだって
焚き付けなきゃ燃えなかっただろ」



いやいや…待て…
一気に涙は乾いた

燃えるどころか、冷めましたよ
父さん…。



でも今なら分かる事もある

《どうでもよくて決めない》


しっかり見ていて貰えてた事が素直に嬉しい。



「父さん、
これからもよろしくお願いしますね」



「こっちの台詞だな」



笑いながら話したのなんて
久しぶりで少し恥ずかしかったのは
黙っておこう。


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