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リクエストのラストワルツ
第2章 姉のようなひと

 手の込んだ料理ではなかったが、バターソースの効いたムニエルをはじめ、冴子の料理はことのほか美味しくて、慎也はあまり飲み慣れないワインも進んだ。

 女性の部屋にふたりっきりで食事をするなどということを慎也はまだ経験したことがなかったから、あまりにもできすぎた事の流れに戸惑いを感じる余裕すら失って、軽い酔いが回るのも普段より早かったような気がしていた。

 しかし今のところ、怖い彼氏の登場もなさそうだったし、むしろ眼に入る範囲では男の影というものを感じられず彼はいくらか安心できたが、なぜ自分が、という疑問はまだ解けずにいた。
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