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リクエストのラストワルツ
第2章 姉のようなひと

「今は何を習ってるの?」
きのうに続けてダンスの話になる。
「ルンバが終わって、タンゴを始めています」
「ほかと違ってちょっと難しいでしょ?」
「はい、あまり好きじゃないかも…」
「何が好きなの?」
冴子がどんどん訊いてくる。
「ジルバが踊りたくて習う気になったんですけど、ルンバも優雅でいいですよね」
「わたしもルンバ好きだけどタンゴもいいわよ」
「でも難しそうですよね」
「教えてあげましょうか?」
「え? ここでですか?」
「そうよ」という間もなく冴子は立ち上がると慎也の手を引いた。
壁際のコーナーに置かれたテレビの横のライティングデスクとベッドとの間には、かろうじてふたりが並んで立てるだけのスペースがあったので、そこで冴子は向かい合って慎也にタンゴの組み姿勢を取らせた。
「いい? そう、もっと胸張って」
「はい」
「右脚の腿の外側でわたしの左脚の内側をサポートするの」
教室で教わっているとおりなのだが、今のシチュエーションは慎也には刺激が強すぎた。
「遠慮しちゃだめよ、もっとしっかり」
上体を少し反らせた冴子の胸のふくらみがピンと張ったのが眼の片隅に入ると慎也は下半身が充血するのを防ぐことができなかった。
そしてそれは冴子も感じていたのである。
「かわいいわね… 慎也くんって」
「え…?」
慎也の左手と組んでいた右手を解いた冴子は、そのままその手で慎也の股間にそっと触れた。
「え!?」
「かわいいわ… こんなになっちゃって…」
慎也の右手は冴子の背中に、冴子の左手は慎也の背中に、それぞれホールドし合ったまま一瞬、時が止まったように慎也は思った。
恥ずかしさの前に、脳を貫くような官能の刺激が彼の理性を失わせた。

