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リクエストのラストワルツ
第5章 台風の夜

月曜の朝から考えると5日ぶりの何も変わりなくきれいに整えられている冴子の部屋のキッチンカウンターの上に、先週慎也が持ってきたカスミソウがまだ鮮やかな白を残していた。
そして窓際には冴子の下着がタオルやハンカチと一緒に干されているのが眼に入った。
「ごめんね、コスモスは花が落ちちゃったの」
残念そうに冴子が言った。
切り花にするとコスモスの寿命は短い。
「慎也くん、お紅茶飲む?」
慎也はコーヒーよりも紅茶が好きだったので、喜んでそう返事した。
香ばしいダージリンの香りが部屋に満ち、サンドイッチを頬張る冴子を見ていると彼は感じたことのない種類の幸せな気持ちになった。
「お天気だったらどこか出かけようと思ってたんだけど残念だわ」
「でも、冴子さんと一緒にいられるならぼくはどこででもいいです」
「ありがとう、うれしいわ」
冴子は本心でそう言えた。
慎也が一瞬、座った位置から見える窓際の洗濯物に眼をやったのを見た冴子が言った。
「あのね、あとで一緒に慎也くんの下着探したいの」
「え? それでどうするんですか?」
「うちに置いとくのよ、着替えで」

