この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
リクエストのラストワルツ
第5章 台風の夜

その日は、3回目の週末ということと、初めから夜を一緒に過ごすことが決まっていたせいもあって、会うとすぐ衝動的に抱き合うということもない穏やかな時間が流れていた。
お互いの下着選びにたっぷり時間をかけてPCを閉じようとしたとき、ふと思い立ったかのように冴子が言った。
「ねえ、もう少ししたらどこか近くに旅行しない?」
「どこへですか?」
「館山って行ったことある?」
「富山の?」
「ううん、房総よ」
「ああ… 行ったことはないけど、行ってみたいです」
「良かった。 行ってみたいホテルがあるの」
実はそれは冴子が春に別れたダンス教師と約束をしていて叶わなかった行先だったが、そんなことは慎也がわかるはずもなかった。
「お部屋のバルコニーに広い露天風呂があって、海も見えるの」
「いいですね。冴子さんと露天風呂…」
閉じかけたPCでそのホテルのHPを見せながら、冴子が言った。
「ほら、素敵でしょ?」
「すごいですね、でも高そう…」
「そうね、でもせっかくだから」
こうして10月のふたりだけの旅行は決まった。

