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リクエストのラストワルツ
第6章 海を見ながら

「あ… ああ…」

 懸命に押し殺した声が冴子の口からかすかに洩れるが、かろうじてエンジンと走行の音でかき消される。

「っっあっ… あっ… ぅあっ…」

 ショーツとストッキングの2枚の薄い布の上から触られるいつもとは違う掻きむしりたくなるような焦れったさが、かえって冴子を煽った。

「だ… だめっ… あ… ああ… い… い…」

 ほんのわずか、明るさが射したように感じた。

「い、いく… いくっ!」

 海底トンネルを抜けて、車内の音と明るさが大きく変わった瞬間、冴子は慎也の手を両手で握りしめたままシートに預けた背を反らせて達してしまった。

「っんもう…」

 ひと呼吸おいた冴子に手の甲をつねられた慎也は、小首をかしげて微笑みながらささやいた。

「かわいかった… さえこさん…」

 頬を膨らませた冴子に今度は手を叩かれてパチンと音がした。

バスは静かに海ほたるパーキングへ滑り込もうとしていた。

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