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リクエストのラストワルツ
第6章 海を見ながら

左右に広がる海の上を走る高速バスから見る景色は、ふたりの気持ちを高揚させるには充分で、行き交う船を眺めながら、海を見るのはどのくらいぶりだろう、とそれぞれに思っていた。
富浦の道の駅で数組の客を新たに乗せたバスは、いくつかの停留所を経てやがて館山駅に着いた。
南房総先端のリゾートの町の玄関口は特別な賑わいもない静かな佇まいである。
「意外と静かなのね」
「きっと夏は賑やかなんでしょうけど…」
洲崎灯台へのバスを待つ間、駅前を少しだけ歩きながらふたりは日常から離れた穏やかさを感じていた。

