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リクエストのラストワルツ
第6章 海を見ながら

「露天風呂入りませんか?」
 
 コーヒーを空にした慎也が冴子を見ながら言った。

「え? 今から?」
「うん、こんなこと、せっかくだから…」
「そうね、せっかくこんないいお天気だしね」
「やったあ!」

 子供のように喜ぶ慎也の笑顔を見て冴子は声を上げて笑った。


 
 寝湯の枕に頭を載せて先に体を伸ばしていた慎也の横から、巻いたバスタオルを濡らさないように取りながら冴子が入ってくる。
 まだ強い日差しを受けながら見る冴子の透きとおるような肌が眩しすぎて、慎也は自分の体の興奮よりも、むしろ感動すら覚えていた。

「そんなに見ないで、恥ずかしいから」
「いえ… きれいすぎて…」
「拝観料とるわよ」
「いくらですか?」
「さあ、いくらにしようかな…」

笑いあったはずみに浮力で少しだけ体が浮くと、冴子の小ぶりで可愛い胸のふくらみの頂上あたりがきらきらと光る水面から現れては消える。
心の底から、美しい人だと慎也は改めて思った。

両隣の部屋との間には木製の高い仕切り塀があり、正面は遠くの海が見えるだけなので、どこからも見られるはずはなかったが、見られていてもいいとさえ思う幸せな午後だった。

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