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リクエストのラストワルツ
第7章 リクエストのラストワルツ

駐車場で手紙を読んだ冴子は、しばらくハンドルを握ることができなかった。
(そういえば電話番号知らせていなかった…)
本宮と別れてから、冴子は気持ちの整理をつけるためにマンションを変えたし、LINEも削除していたので、冴子との連絡手段を失っていた彼は手紙を教室の受付に託したのだった。
その手紙には、彼が実家のある広島に引っ越してから離婚したことと併せて、新たに開いた教室を一緒に運営してくれないか、ということが書かれていた。
(一緒に…? 結婚してくれってこと?
そんな… 今ごろになって… どういうこと?…)
広島に引っ越してから間もなく彼が離婚に至った詳しい理由は書かれていなかったが、慎也と楽しげに踊っていた自分を見ていたはずの本宮の手紙は冴子の頭を混乱させた。
彼女自身、本宮に対して全く未練がなくなっていたわけではないことに、そのとき気づいたのである。
>さっき戻りました。今夜大丈夫ですか?
慎也からのLINEの着信で我に返った冴子は、気持ちを鎮めてから返信をした。
>>大丈夫よ、これから帰るわ
2週間ぶりに慎也に抱かれた冴子は、激しく燃えた。
さっきまで頭の中を大きく占めていた本宮の面影を振り払おうとしたのだったが、絶頂に震えたあとそれが甦ってくるのを防ぐことができなかった。

