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智恵の輪
第1章 誘い
智恵さんは私の肩越しに男性客2人が、お店を出るのを見ていた。同時に舞さんもお店の扉を抜け、店外に出た。私もその様子を見つめていた。

手の温もりを太ももに感じ取り、私が慌てて振り返ると、智恵さんの顔がすぐ近くにあった。電車内で互いの体を寄せ合った時のように、『私は嫌じゃないよ…』と微かな声で呟いた時のように、黙って私を見つめていた。

バーの店内で、互いの手をカウンターの上で絡ませ合い、私はそっと彼女に近付き、目を閉じ、見えない彼女との距離を縮め、そっと唇に触れ、柔らかくキスをした。2人は互いの唇から微かな音を立て、そっと唇を重ね合った。

「ハッ…」と智恵さんの声が漏れ、その時に扉が開く音が聞こえ、2人はとっさに距離を取った。入ってきたのは舞さんだった。彼女はよそよそしくする2人を見つめ、微笑み、今度は私の方を見つめた。
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