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恋かるた
第3章 ものや思わむ -霜月-

 その夜、ひとりの時間になってから志織は意を決したようにスマホを手に取るとLINEを開いた。

 そして、昼間に渡された沢田の名刺を取り出してIDを入れると、もう一度ためらいながらトークの文字を打つ。

>>遅くに申し訳ございません。
  こちら沢田様でよろしいでしょうか?
   松石志織

少し堅苦しいかなと思いながら、画面をしばらく眺めたあと、送信ボタンを押す。

(時間も遅いし、返信はあしたかな…)

 画面の時計は、日曜夜の11時過ぎを表示していた。



〝♪ピヨピヨ〟

 寝支度をして掛布団をめくり、ベッドに片脚を載せたその時、LINEの着信音が鳴った。

>こんばんは
 沢田です
 
 予想外に早い返信に喜んだ志織は載せた脚を下ろしてベッドに腰掛けた。

>>お返事ありがとうございます。
  ご都合のおよろしい折にお訪ねしてよろしいでしょうか?

 何度か読み返してから送信すると、すぐに返事が来た。

>土日で都合の良い日をいくつか教えてください

 志織は手帳のカレンダーを確認する。
 そして翌週の日曜と翌々週の土日が空いていることを返信した。

>では、再来週の土曜日
 時間は決まったら教えてください

>>ありがとうございます
  10時頃お伺いしてよろしいですか?

>承知しました
 お待ちしています
 おやすみなさい 

>>ありがとうございます
  おやすみなさい


(どうしよう… 約束してしまった…)

 あまり遅くなるのは失礼だと思って返事を急いだ志織だったが、スマホを閉じてから少しうろたえの気持ちが走った。

(どんな格好で行けばいいのだろう…
何をお話しすればいいのだろう…)

 戸惑いの中にときめきを感じている自分に気がつき、こんな気持ちになるのはいつ以来だろうかと思いながらその夜、志織はそれからしばらく寝付くことができなかった。
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