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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第14章 快楽のトリガー
ホテルの入り口には薄いオレンジ色のライトが灯されていて、彫刻の陰影がゆっくり呼吸しているように見えた。

「ここが良さそう。見た目も綺麗だし。」

そう言って楓は微笑みながら裕樹の手を引いた。

裕樹は一歩踏み出すたびに、雑多な人の声や車の音が遠くなっていくのを感じる。

振り返ることはせず、開いた自動ドアの中に吸い込まれるように二人はホテルの中へと入っていく。

背後の自動ドアが閉まると、外の音はすべて遮断された。

照明は薄く暖かく、どこか美術館のような静けさがあった。

壁際には、空室のパネルが並んでいて、長方形の小さな窓の中の写真が光っていた。

大きなベッド、白いシーツ、ピンクのライト、ガラス張りの浴室。

どれも同じようで、どれも知らない場所だった。

「どれがいい?」

楓が振り返りながら、指先で一つひとつの写真をなぞる。

「え、あ……、こういうホテルに来たことがなくて…。」

言葉が喉に詰まる。

裕樹には、これから部屋を選ぶことも、どんな部屋を選ぶのが正解なのかも分からなかった。

楓は目を丸くした後、愛玩動物を愛でるような目で裕樹を見つめる。

「えっ…、そうなの?初めてなんだ…。」

楓は驚きつつも、どこか嬉しそうな表情でパネル全体を見ていた。

うーん、と数秒考えた後に一つのボタンを押す。

「ここにしようかな。」

指先が触れた瞬間、パネルの奥で電子音が短く鳴った。

すぐ横の小さな取り出し口のランプが点灯し、薄いカードキーが一枚、静かに押し出されてくる。

白いプラスチックにホテルのロゴだけが印刷された、ルームキー。

「ほら、こうやって鍵が出てくるの。」

楓がそれを摘み上げ、軽く指で弾く。

まるで「今度はあなたが選べるようになるのよ」と指導をされているみたいだな、と裕樹は心の中で思う。

ぺち、と薄いカードならではの音がして、
裕樹の胸の奥の緊張がひとつ、形になったように感じた。
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