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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第14章 快楽のトリガー
受け取ったカードキーを軽く掲げ、行こっか、と楓は歩き出す。

初めて会った人間に、知らない場所で手を引かれていく謎の緊張感。

ロビーの奥には、鏡面仕上げの壁に溶け込むようにエレベーターがあった。

呼び出しボタンを押すと、静かに光が灯り、すぐに扉が開いた。

狭いエレベーターの中に乗り込むと、その瞬間──空気が変わった。

楓の柔らかい肌と熱は近くに感じられて、化粧と甘い香りが鼻腔に流れ込んでくる。

さながら袋の鼠になった裕樹の胸に、楓はネイルの表面でなぞるように撫でた。

「アキくん…すごく緊張してるんだね…」

無邪気な大人の声から一変して、低くて湿り気のある声が、裕樹の脳を直接くすぐるように語りかけてくる。

蛇が体の表面を這うように、胸から鳩尾、へそへと指先が動いていくのを裕樹はただ見ていた。

まだ服を脱がされていないのに、体のどこに何があるのかを言い当てていくような触れ方。

「こういうところに来たら…」

楓は囁くように笑って、その息遣いが耳元をくすぐり、こう続けた。

「エレベーターの中から始まってるんだよ?」

裕樹の心臓がドキンと跳ねると同時に、下半身が布地を押し上げるように隆起した。

確実にそれに気づいている楓は、あえて硬くなっているそれには触れない。

ホテルの中では、考える時間、気持ちの整理、逃げる余地すら与えられない場所なのだと裕樹は理解する。

楓の手は、そこから裕樹の手の甲に触れてからゆっくりと指を絡めた。

その瞬間、エレベーターのドアがゆっくりと開く。

ほんの数十秒、エレベーターにいただけのはずなのに、裕樹は体の奥に火を灯されたようにじんわりと熱くなった。
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