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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第14章 快楽のトリガー
廊下は白い壁に淡いランプが灯っていて、かすかに流れる落ち着いたBGMが、廊下の静けさをさらに深くしていた。

二人の足音だけが、床に吸い込まれるように小さく響いた。

楓はカードキーを指先で器用に転がしながら歩き、点滅しているネオンライトの部屋番号の前で立ち止まる。

「ここだね。」

楓はそう言って裕樹の方を見る。

その表情は、拒むという選択肢を優しく取り上げるような笑みを浮かべていた。

裕樹はその笑みに体を揺さぶられ、そのせいで心臓が揺れているのだと錯覚するほど、鼓動は大きくなっていた。

楓がカードキーをかざすと、ピッ…と小さな電子音が鳴り、緑のランプが灯る。

ロックが外れ、楓はドアノブを回してゆっくりと中へ裕樹を誘い入れた。

吸い込まれるように、裕樹は部屋へと入った。

ドアが閉まった後に、ロックの電子音がやけに大きく聞こえる。

カラオケの個室とは違い、この扉の向こうには誰も来ない。

一度閉じてしまえば、外の世界から完全に切り離された二人きりの空間になる。

それは、逃げ道が塞がれるようで少し怖い。

なのに──

どれほど乱れても、どんな表情や声を漏らしても、ここで起きたことが外に触れることはない。

そう思うと裕樹は、妙な安心感を覚えた。

この場所ならどんな自分を見せても構わないという、言葉にならない快楽の免罪符か。

一回り年上の女性と関係を持って、その女性とどんなプレイをしようともこの場所でなら。

楓も同じような安心感を得たのか、部屋に入るなり「おいで」と両手を広げて一歩前へと近づいた。

言葉を交わすより先に、裕樹は楓の豊かな胸元へ吸い寄せられるように体を預ける。

楓の温もりや柔らかさ、息遣いが密着した肌から頭の中へと伝わってくるようだった。
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