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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第14章 快楽のトリガー
「どう?初めてのラブホテルは?」

その問いかけに、裕樹は部屋の照明がわずかに暗くなったように錯覚する。

同じ明るさのはずなのに、室内の空気だけが、息を潜めた獣のような気配に変わる。

「普通のホテルと全然違うって思ってるんじゃない?」

裕樹は、喉の奥で微かに息を飲んだ。

(……そう。ここは寝泊まりや休息する空間じゃない。ここは…。)

──乱れて、本能を解放するために作られた場所。

楓は裕樹の視線の揺らぎを確認すると、ゆっくり、優しく告げた。

「ここではね、日常のルールはいらないの。触りたいなら触る。言いたいことは言う。…ここは…そういうための場所だから。」

裕樹の背筋に、キスとは別の種類の熱が走る。

逃げ道は閉ざされ、堕ちる場所に連れてこられたと、身体の奥がようやく理解した。

楓の指先が、服の上から腹をなぞるように這い、下腹部へと滑り込んでくる。

その感触と、堕落を促すような言葉が重なって、裕樹の理性は一瞬で吹き飛んだ。

頭で考えるよりも先に、今度は裕樹の方から楓の唇を貪るように奪っていた。

「んふ…、急にどうしたの?欲しくなっちゃった?」

楓は驚いたように息を漏らしたが、拒まない。

まるでこの展開を予想して、再び唇を重ねる刻を待っているかのように、ふわりと微笑む。

楓の身体は、裕樹の方に沈むように強く抱き寄せられ、唇が深く重なる。

つがいの蛇のように舌が複雑に絡み合い、短く湿った音が鳴り響く。

「んっ…我慢できなくなった?」

唇が離れた瞬間、楓の声は僅かに上擦り、呼吸が少しだけ乱れる。

裕樹が快楽に沈んでいく様を、楽しみながら観察していた楓が、予想以上の強引さに反応が零れたように見えた。

だが裕樹には、その変化を読み取る理性は残っていない。

楓は逃げるでも拒むでもなく。

裕樹を受け入れる形で、首元に手をそっと添える。
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