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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第14章 快楽のトリガー
唇が触れ合うと、二人の重心がわずかに揺れる。

呼吸がリズムになり、それはまるでダンスのステップのようで──

踵が床を掠めるたび、二人の身体が少しずつ後ろへ滑る。

やがて、ベッドのフレームに踵が触れたところで動きが止まる。

複雑に絡まった舌は、時間をかけて溶けるように離れ、唇がほどけた。

裕樹が一呼吸置いて、目を開けた瞬間、そこでようやく理解する。

ここで腕を伸ばせば、楓はベッドに沈む。

楓の表情は、追い詰められた人間の顔ではなく、裕樹の選択を待つ表情だった。

柔らかい穏やかな瞳で、「どうする?」と問いかけるように、ただ静かに裕樹を見つめている。

裕樹は躊躇うように、両手をゆっくりと伸ばし、楓の肩に触れる。

触れた瞬間、楓の睫毛はふるりと震える。

それは拒絶や恐怖ではなく
「そう、それでいい」と告げるような合図。

突き飛ばすように力を込めるのではなく、ゆっくりと、楓に「倒れろ」と念じるような弱々しい力。

それが伝わったかのように、楓の身体は素直に動いた。

スローモーションのように腰が沈み、皺のない白いシーツに吸い込まれるようにベッドへ着地する。

片手が後ろへ添えられ、身体の重さを預けた姿勢になると、首筋に沿って髪がふわりと滑れ落ちる。

裕樹は理屈ではなく、肉に引き寄せられるように膝をつき、楓の脚の間へゆっくりと近づいていく。

楓は逃げるのではなく、裕樹に寄り添うように、シーツを押しながら僅かに後ろへ下がる。

誘惑か従属、それすらも曖昧なまま、二人の距離は限界まで詰まって止まった。

重心を支える楓の指先は、ほんの僅かに力がこもっていた。
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