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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第16章 抗えない誘い
気がつくと二人は、ベッドの前で抱き合っていた。

シャワーの名残のせいか、ナツの肌はまだしっとりと温かい。

その柔らかな感触を確かめるように、裕樹は頬でそっと肌を撫でた。

ナツの身体からボディソープの良い匂いがして、さっきの出来事が無かったことのように、身体は"きれい"になっていた。

消えてしまった自分の痕跡を、ナツと同じようにキスマークで残せば良いのだろうか──

そんなことを考えていると、ナツが口を開く。

「裕樹は、復活するのにちょっと時間がかかりそうね。」

ナツは一瞬だけ、裕樹の下半身に視線を落とす。

その眼差しは確かめるというより、楽しむような色を帯びていた。

「あはは…。多分そのうち復活すると思う。」

裕樹は申し訳なさそうに笑って、その視線に応える。

ナツは微笑みながら、裕樹から身体を離した。

取り残されるような気がして、裕樹は思わずナツの手を掴む。

ナツは名残惜しそうにその手を見つめ、最後まで指先を触れ合わせたまま、後退りしてベッドに向かう。

結び目が解けたように指が離れて、ナツはベッドの縁に手をついて腰を下ろした。

見上げてくる瞳の奥には、「そこで待っていて」と宥めるような視線が宿っている気がして、裕樹はその場に立ち尽くしたまま、静かにナツを見つめる。

ナツの視線は裕樹をその場所に縫い留めているようで、そのままベッドに身体を預け、仰向けになった。

何をしようとしているかは、今の仕草からは窺い知れない。

それでも裕樹の心臓の鼓動は大きくなり、無意識に唾をごくりと飲み込む。

ナツは一度だけ、どこか遠くを見つめるように視線をぼやかし、ゆっくりと瞬きをした。

力が抜け、シーツの擦れる音とともに、脚が大きく開かれていく。

左手の指先が唇に運ばれ、舌で関節に唾液を含ませる。

孔雀が羽を広げるようなその仕草に、裕樹は瞬きすることを忘れて、瞳が乾いてひりつくのを感じた。

「ちゃんと見ててね……。」

いつもよりワントーン低い、甘い声が静かに響き渡る。

それは命令と言うよりも、許可に近かった。
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