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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第17章 背徳のドライブ
助手席のシートに腰かけると、僅かに身体が沈み込み、心地が良かった。

裕樹はコンビニの袋からペットボトルを二本取り出した。

一本はキャップを軽くを緩め、ドリンクホルダーに置き、もう一本はそのまま手に取り、蓋を開けて口に含めた。

「ありがとう。それにしても、それ。別にわざわざ買わなくても良かったのに…。」

ナツの言っているのは、袋の中に入っている小箱のことのようだった。

まるで、最初から必要ないものを買ってきたと言わんばかりの口ぶりだった。

五反田で会った時も、ナツは避妊する必要はないと言っていたのを思い出す。

(こういうことを口にするのって、普通逆じゃ…?)

ナツの言葉が軽いのか、本気なのか、分からない。

もし本気だとしたら──この旅行の先に、逃げられない未来が待っているのかもしれない。

そう考えた瞬間、胸の奥がきゅっと縮んだ。

それでも、裕樹は口を開いた。

「だって、中に出しちゃったらデキちゃう…じゃん?」

ナツと視線を合わせることはできず、裕樹はそう言った。

どんな言葉を口にするのか、いつもより長く感じる沈黙は、車のエンジンをかける音で破られる。

ナビの自動音声が鳴った後、目的地を入力しながら、ナツは溜め息と乾いた笑いが混ざったように息を吐く。

「そう簡単に妊娠なんてしないわよ。毎日出してても、ね。」

その言い方には、冗談とも軽口とも違う、確かな重みがあった。

(指輪つけてないけど…まさかナツって既婚者だったりしないよな…?もしかしてこれって不倫旅行……?)

続くはずの言葉を、結局どれも口にはできなかった。

沈黙のせいで、エンジンの乾いた音とラジオのパーソナリティの声だけが、やけに大きく耳に残った。

ナツのことは何も知らなかった。

どこに住んでいるのか、どんな人生を送ってきたのか。

葵のように学校生活を共にしていたわけでもない。

身体の関係のために会う人間──

そう割り切っていいのか、分からない。

相手のことを知った方が、良いスパイスになるのか。

ハンドルを右手で握るナツのことを眺めると、運転には慣れているのか、リラックスしているようだった。

気まずい空気から逃れるように視線を動かすと、ぴんと張ったシートベルトが、柔らかいナツの胸を締め付けて食い込んでいるのに気がついた。
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