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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第18章 泥濘の揺籠
(あ……出る。)

ちょろっとだけ出た瞬間、ぶるっと背中が震えて腕に鳥肌が立った。

徐々に勢いを増して、浴槽のエプロンに叩くようにかけられた尿が排水溝へと流れていく。

顔だけが焼けるほど熱いのに、身体から熱が引いていくのを感じていた。

裕樹が思っていたよりも長く、浴室に水滴の音が響く。

やがてちょろちょろと勢いは弱くなって、終わったという合図をするように裕樹はようやくナツの顔を見る。

出す前と変わらず頬杖をつきながら、満足そうな笑みを浮かべていた。

「出たね。」

ナツは一言だけそう呟いた。

まるで見たかった映画が終わったように、何も感想を言わずに立ち上がった。

シャワーの蛇口を捻り、掌で温度を確かめている。

「湯加減、どうかな?」

ナツがシャワーヘッドを握ったまま指を差していて、そこに手を触れた。

「うん、ちょうどいいかも。」

「あ。」

「ん?どうしたの?」

ナツは呆れた、というような顔をして笑っている。

「ボディソープとか、タオルとか。バッグごと車に置いてきちゃったの思い出した。」

車から裸で手を引かれた時に、後部座席に置き去りにされたカバンが裕樹の脳裏に過ぎる。

「それで言うと、俺は服も全部車の中だよ。」

「あはは、確かにね。ちょっと取ってくるから、待ってて。」

ナツは裕樹の肩に触れてから、そう言って浴室を後にした。

(行っちゃった。車まで裸で行くのかな……)

壁にかけられたシャワーヘッドが、先ほどナツがしゃがんでいた場所に湯を流し続けている。

もしナツにも同じことをお願いしたら、どんな顔をするのだろう。

自分よりも大人なナツは、飄々とした顔で受け止めてしまうのか。

それとも──

そんなことを考えながら、裕樹は二歩ほど進むと、春の雨のようなシャワーが身体に降り注ぐ。

肌を伝う雫が、裕樹の中の大切な何かと混ざって排水溝に流れていくような感覚。

けれどもそこに哀しさや喪失感はなく、体がほんの少し軽くなった気がしていた。
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