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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第4章 密やかな溢れ
葵の体のパーツをパズルのピースを集めるかのように写真を撮り終えた裕樹は口を開く。

「脚…少し開いてもらうことはできる?」

目を伏せようとしていた葵の視線は、完全に伏せきれず時折裕樹と視線がぶつかる。

その目は何も語らなかった。

顔は紅潮して、そこだけが熱を帯びているようだった。

本当は今すぐ逃げたいという後悔と、撮られることを受け入れている感情が混ざり合っている。

後どのくらい自分の画像がスマートフォンに溜まっていくのかを気にするように。

「…っ…ぅ…」

葵は何かを発しようとしたが、それは声にならない。

そして目を伏せたまま、ゆっくりと脚を動かし始める。

腰のラインが徐々に傾いていき、下腹が少しだけ前に出て、身体の中心がそっと重心を移す。

裕樹のことを誘惑するかのように太腿を解いて脚を広げた。

「やばっ…それめっちゃエロいじゃん。」

体のパーツではなく、グラビア撮影のように葵全体を被写体にカメラに収める。

カメラのシャッターを何度もタップしていたが、裕樹は画面越しに葵を見ることをやめて、音を立てないようにスマホをゆっくりと置く。

静寂がシャッター音の行方を追っていた。

目を瞑っていた葵も何か空気の変化を感じたのか、薄く目を開けると裕樹と視線がぶつかった。

その目は今までのような観察する眼差しとは異なっていて。

例えば、そう─────美術館に飾られた絵画を静かに眺めるような…。
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