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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第5章 滲む境界
妄想の中で葵を汚している事への罪悪感からか、裕樹は一瞬だけ言葉に詰まった。

「こうやって見せてくれるようになってからは、よりリアリティが増して捗ってるよ。この間の送ってくれた写真でもたくさん妄想したし。今ここで起きてることも…オカズにする」

「そう…なんだ…。」

葵は肩をすくめて、裕樹の目をじっと覗き込む。

「そんなに妄想してるならさ…今抜いちゃえば?」

「へ…?今!?」

裕樹の声は思わず裏返る。

先ほどの沈黙が、これ以上は行ってはいけないという暗黙の了解を定義したはずだった。

それを全て無視しているのか、他人事だと思っているのか、その軽さに裕樹は戸惑った。

声が裏返る裕樹の様子を葵は何も言わずに見つめている。

その目には驚きや拒絶反応はなく、これから起きる事を全て観察しようとするような、熱を帯びた視線が向けられていた。

その視線にどう応えたら良いのか分からず、裕樹は言葉を失う。

先ほどとは別の沈黙が2人に訪れる。

葵が何も言わないことが、逆に全てを許されているようだった。

そして裕樹は気付く。この葵から向けられる視線は、普段は自身が葵に向けているものと同じということに。

裕樹はゆっくりと息を吐いた。

その息は諦めや覚悟ともつかない、舞台の本番の前のような緊張も含まれていた。
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