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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第7章 可惜夜に焦がれ墜つ【序】
内腿に触れた指先は、ボディラインをゆっくりと撫でていく。

指先が川を登る魚のように、ウエストや胸の膨らみをなぞって、肩のワンピースの布地を目指した。

体の形を確認されるたびに葵の喉は動いて、ゆっくりと浅く息を吐く音が聞こえる。

葵の肩まで戻ってきた指先で、ワンピースの肩の布地を指の関節で挟むようにしてゆっくりと左右に開く。

この状況で葵が動きを止めるのでは、と裕樹は一瞬ためらい、葵が気付かないような速度で肩からゆっくりと腕を通していく。

ワンピースの布地が葵の背中と腕を撫でるように落ちていくのを、葵は静止することなく、静かに舞うようにキャンピングチェアに広がった。

葵の肌は下着だけを残して露わになった。

ディープパープルのレースの縁は肌に食い込んでいて、妖艶な曲線を際立たせている。

裕樹は、そろそろと葵の温かさが残ったワンピースを回収し、丁寧に畳んで汚れないようにそっと脇に置く。

裕樹は靴音をカツカツと鳴らしながら、三脚の方へと歩いて行き、セットされた葵のスマホの画面を覗き込む。

スマホの画面越しに見る葵は、下着だけになった自分の姿に戸惑いながらも、逃げることなくその場に座る、葵の覚悟の様子を切り取っていた。

腕を胸元に回し、体を抱え込むようにして肌を隠そうとする仕草が、かえってその柔らかさを際立たせる。

顔を横に背けて、肩が僅かに震えて、その表情は窺えない。
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