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第6章 余韻から現実へ

そんなことを思いながら、お互いに相手の境遇や自分の境遇に思いを巡らしながら、余韻に浸っていると、齋藤のスマートフォンが鳴った。そう、さっきからLINEの着信音は微かに聞こえていたが、齋藤は無視していた。オリザも気にはなっていたが、それどころではなかったというのが事実。

オリザがつないでいた手を解いた。齋藤はやむを得ないという感じで、立ち上がり、スマートフォンが入っているボディバッグからスマートフォンを取り出した。鳴り続けている着信音の音楽が響く。スマートフォンを見た齋藤がため息をついた。

咲良か。

その表情からオリザにも相手が誰かわかった。立ち上がったオリザが、

「シャワーしてくるから」

と、部屋を出て行った。

シャワーを冷水で浴び、オリザは、火照った身体を冷やした。気持ち良かった。そう、齋藤とのエッチは気持ちがよかった。夫とは比べるべくもなく、最高のエッチだった。

でも、その反面、齋藤のことを好きで、齋藤には彼女気取りと言われていても、齋藤のことが好きな咲良という会ったこともない女性には後ろめたさが募ってきていた。

「自分がされて嫌なことは他人にするな」と言われて育ったオリザにとって、今の状況は、まさに、それに反している状況。久しぶりのエッチに興奮していたオリザだったが、シャワーの冷水と同時に、頭を冷やしたというべきか、冷静になって考えると、罪悪感がどんどん高まってきた。

そう、自分は夫の許可を得たけど、齋藤は、咲良さんの許可は得ていない。寝取ったと言われても仕方がない状況。しかも、咲良は齋藤に連絡をしようとしていたのに、そのさなかに、エッチをしていたことも後ろめたさが増す原因だった。

シャワーを終えて、身体を拭いて、着替えたオリザが、主寝室に戻ると、齋藤が、全裸のまま、待っていた。

「シャワーをしたほうがいいわ」

オリザが伝えると、齋藤は、頷いたが、なんとなく、オリザに違和感を抱いた様子だったが、素直にバスルームに向かった。齋藤は、オリザの変化に戸惑っていた。

齋藤がシャワーを浴びていると、

「タオルと、着替え、ここにあるから」

と、オリザの声が聞こえた。齋藤は、シャワーを終えてドアを開けて、タオルで拭き、B.V.Dのブリーフとランニングを封から出して着た。旦那用なのかもしれないが、少し小さい。そして、着てきた服を着た。