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いまやめないで このままでいて
第1章 第1話 10,000メートルの空でとろけて

機体は大きく旋回し、どこの街かはわからなかったが下のほうに灯りが散りばめられている。
ふたりはまだ暗い座席で頬を寄せ合って眺めながら何度も小さなキスを繰り返した。
安定飛行に移ると室内灯が明るくなり、まもなく軽食サービスが始まった。
飲み物を尋ねられて孝弘はすぐにブラデイーメアリーをリクエストしたが、何を頼んでよいかわからなかった葉月もそれに倣った。
透明なペットのカップに注がれた深紅のお酒でふたりはささやかな、しかし熱い乾杯をした。
「飛行機の中は酔いやすいから気をつけてね」
そう言う孝弘のまなざしだけで葉月は酔いそうだったが、確かに彼女の口には濃いように思えた。
サービスされていたドリンクカップが回収され、少ししてから深夜なので消灯する旨のアナウンスが日本語と英語で入るとまもなく室内灯が消された。
離陸時に閉じられていたシャッターを少し開けて、窓の外を見ても陸地の灯りはもう見えなかった。
静かになった機内に低いエンジン音だけが大きく響く。
「寝ようか?」
シートを倒した孝弘にそう声をかけられて、葉月は軽くうなずいてブランケットを掛けたが、酒の酔いを感じながらもまだ眠れそうになかった。

