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いまやめないで このままでいて
第8章  第8話  知らなかったこの震える悦びを

 平日の浅草はまるで日本ではないように思えるほど外国人観光客で賑わっていた。

 新緑の隅田川べりを歩き、浅草寺を抜けるとふたりは観光ルートを外れた裏道を選んだ。

「すごいことになってるんですね」

 めったに都心へ出るなどということのない奈津子が、ほっとしたような声で栗原に言う。

「年々多くなってますね、外国の人」

 本通りを外れると民泊の看板がいくつか眼に入ったが、その先の白い外壁の瀟洒なホテルへ奈津子は導かれた。

 栗原がカードキーをフロントで受け取り、コーヒーマシンの置かれた小さなロビーを抜けてエレベータに乗ると、奈津子はそっと彼に握られた手を返事するように握り返していた。

「ここ、来られたことあるんですか?」

「いえ、初めてです」

 結婚する前には何度か煽情的なラブホテルの経験もあったが、ビジネスホテルのようなその落ち着いた佇まいは彼女にもいくらか抵抗が少なかった。



 意を決して栗原と会って話をしてからのふたりは、そうなることが決まっていたかのようにすぐに惹かれ合い、彼にも奈津子が抱えている夫婦間の亀裂と同じような問題があることを知ってからは、決して知られてはいけない関係におちるのに時間はかからなかった。

 彼は3つ年下だということがわかってからも、その穏やかに包むような話ぶりと振る舞いは夫とは全く違っていて、奈津子は久しぶりに大きな安心感を得ると、長く忘れていた男に甘えるという心地よい感覚を取り戻していた。

(これで良かったのかしら…)

 行先階のランプが移っていくのを黙って見つめている栗原の横顔を視野の端で眺めながら奈津子は思ったが、これから起きるであろう展開に不安はあまりなかった。

 むしろまだ女として見られていることへのうれしさのほうが大きかった。

 職場で接するたびに、彼が夫だったら穏やかな毎日を過ごせるのだろうなと思っている彼と今、一緒にホテルにいるのだ。

 7階でランプが止まり、小さな心地よい音とともにエレベータのドアが開くと、重厚な印象のホールと廊下が眼の前にあった。

 うながされるようにして厚いカーペットの廊下を少しだけ進み、重い玄関ドアを開けると室内ドアの向こうには普段見慣れない落ち着いた部屋が待っていた。

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