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僕の母さん
第7章 母、真弓の憂鬱

「ちょっとお客さん困りますよ
車の中で吐かないでくださいよ」

急いでタクシーを停車してもらって彼を引きずり下ろすと
歩道の脇の植え込みで壮亮は激しくリバースした。

再びタクシーに乗り込みしばらく走ると再びリバースしたいと言い出す。
そして、タクシーを降りてリバース。

「お客さん、これじゃ埒が明かないよ
もうその辺で横になって休ませてあげたら?」

ついにタクシーの運転手がしびれを切らした。
そのうち下車に間に合わず車の中で吐かれるのが目に見えていた。

「ほら、そこ。
そこにホテルがあるでしょ、そこでゆっくりと寝させてやんなよ」

運転手が言うように、すぐそこにラブホテルのネオンが輝いていた。

そうするのがいいのかしら?

今なら肩を貸してあげれば何とか歩いてもらえるけれど、
完全に酩酊して寝られては担いで降ろさなければいけない。
それを考えると今のうちにホテルの部屋に入って酔いがさめるまで寝かしてあげるのがベストだと思えた。

「仕方ないわね、じゃあ、ホテルに車を横付けしてもらえますか?」

そうして、真弓と壮亮の二人はラブホテルの一室に足を踏み入れた。
久々のラブホテル…
まさかこんな形で知り合った若い男の子とラブホテルを利用することになるなんて思いもしなかった。

『一晩、家に帰らないなんて始めてだわ…
あの子、ちゃんと晩ごはんを食べたかしら?』

母親としての顔に戻りつつある真弓を彼の一言が思考を停止させた。
「おしっこ…」
ムニャムニャと言いながら彼はベッドの上でズボンのファスナーを降ろし始めた。
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