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僕の母さん
第12章 破談
部屋に戻って、訪問着を脱ごうとしたタイミングでドアのインターホンが鳴った。
「はい、どちら様ですか?」
- 私、辰巳電子の社長秘書をしております池永と申します -
「辰己さんの?…あの、どうしてこの部屋を?」
- 大変失礼かと思いましたが、尾行させていただきました -
『尾行?そんな探偵ドラマでもあるまいし…』
- 社長が先ほどの無礼を詫びたいと申しまして…
出来ますれば私とご同行願えますでしょうか? -
お願いというよりも、何がなんでも一緒に来いというニュアンスを感じた。
「わかりましたしばらくお待ちください」
真弓は脱ぎかけのワンピースの身だしなみを整えると、
急いでエレベーターを降りてエントランスに向かった。
そこには黒いスーツに身を包んだインテリっぽい痩せた男が真弓を待ち構えていた。
「すいません、おくつろぎのところ申し訳ありませんが、ご足労をお願いします」
そう言って、まるで、拉致するかのように真弓を玄関前に停めてあった黒塗りのベンツに乗り込ませた。
「あの…どちらに?」
「社長があなたへの非を詫びたいとキャニオンホテルでお待ちかねです」
ホテルの地下駐車場に車を駐車すると「この部屋で社長は待っておられます」と一枚のカードキーを手渡された。
「あの…ご一緒してくださるんじゃ…」
「いえ、ここから先は社長のプライベートになりますので、社員の私が同行するのはここまでです」
一体、私に非を詫びたいって何なのよ!
辰己さんも同じように呼び出されているのかしら?
だとしたらスマホに連絡ぐらいしてくれてもよさそうなのに…
何か変だわと思いながらもエレベーターに乗り込んでカードキーに書き込まれている部屋を目指した。

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