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僕の母さん
第15章 それぞれの秋

一方、無事にクラス全員の三者懇談を済ませた担任の秋吉先生は、クラス全員の成績表を厳重に保管しながら職員室で熱いコーヒーを飲んでいた。

「どうだい?モンスターペアレントはいなかったかい?」

三年生のクラスを受け持つ三島先生が、同じようにサーバーからコーヒをカップに入れて向かいの自分の席に座って憔悴している秋吉に声をかけてきた。

「いや、保護者のみなさん誰もが教育に熱心な方ばかりなので、無理難題を申し出てくる人はいませんでした」

「そうだろうね、なんてたって、まだ中二だからな…
これが受験を間近に控えた中三になるとおとなしい保護者もいきなり牙を剥いてくるからね」

「中二と中三では、やはりかなり違うんですか?」

「違う違う。どの保護者も我が子を少しでも良い高校に入学させようと必死になってくるからね
こっちもいちいち真剣に相談に乗れないよ」

でもね…
そう言って三島先生は席を立つと、わざわざ回り込んできて秋吉先生の隣の席に腰を下ろすと顔を近づけてヒソヒソ話をするかのように「大きな声じゃ言えないけど…」とニヤリと笑った。

「な、何でしょうか?」

「受験生の親は…それも教育熱心な母親ほど、こちらに従順になってくれるものなんですよ」

「従順?」

「高校受験では中学の内申点が大きく影響します」

「ええ、それは知ってますが…」

「お子さんに有利なように内申点を操作してあげるって囁いてあげると、どの母親も尻を振り乳房を揺らして甘えてくるんですよ!」

「あの…仰っている意味が良くわかりませんが…」

「まあ、君も中三を受け持つことになれば美味しい思いが出来るってのを頭の片隅に入れておいてあげようかなと思いましてね」

じゃあ、僕はこの辺で失礼させてもらうよ
なんてったって二人の親御さんをアンアン言わせなきゃならないんでね…

そう言って三島先生は栄養ドリンクを二本立て続けに飲んで「体力勝負ですからね」と意味深に笑って帰り支度を始めた。

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