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僕の母さん
第1章 離婚

「いい?新しい学校なんだから最初が肝心よ
バカだと気づかれないように真面目に授業を受けるのよ」

「面と向かって自分の息子をバカだとよく言えるね」

「だって、本当の事じゃないの」

朝食を済ませて身支度を整えた達郎を
「頑張ってね」と気合いを込めさせるために肩をバンバンと叩いた。

「あの子、道を間違えなきゃいいんだけど…」

周りをキョロキョロしながら登校してゆく達郎の背中を見送りながら「さて、私も用意しなきゃ」と鏡の前に座ってメイクを始めてゆく。

夫と離婚したからには、
今までのように専業主婦として呑気にしている場合ではなかった。
短大を卒業した時以来の就職の面接とやらに臨まなければならない。

『この年齢で雇ってもらえるかしら?』

メイクを施しながら、鏡の中の自分に向かって「まだまだ20代で通用すると思うんだけどなあ」と自惚れた。

別れた夫とは短大に通っている頃、
近所のコンビニエンスストアで出会った。
出会ったと言うか、彼はそのコンビニでバイトをしていて、
よく買い物をする真弓と、いつしか軽い世間話さえする仲になっていた。

ある夜、いつものようにコンビニで買い物をして店を出て家に帰ろうとすると、後ろから彼が追いかけてきた。

「ふぅ~、やっと追いついたよ」

どうやらバイトが終わったらしく、帰り道の方角も同じだと言うので、しばらくは肩を並べて歩いた。

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