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僕の母さん
第1章 離婚

「あの~…俺、清水と言います。清水芳郎です」

「はあ…」

いきなり自己紹介されても…
あ、でも、名乗らずにいきなり何かの話題を話しかけられるのも変だわね…

真弓は仕方なく「私は高坂です」と名字だけ名乗った。

「高坂…なに子さんかな?」

自分が下の名前まで暴露したのだから、真弓にまで姓だけでなく名前まで教えて欲しいと催促してきた。
「…真弓です」仕方なく教えてあげると、
「真弓ちゃんは、この辺りに住んでるの?」とまるで幼馴染みか旧知の間柄のように親しく「ちゃん」付けで名前を呼んできた。

『ヤバい人かもしんないわ…』

とにかく彼から離れたくて足早になってゆく。
本当は駆け出して逃げたいのだけれど、
小さい頃から足だけは遅かったので、すぐまた追い付かれるし、
何故、逃げるんだよ!と彼を怒らせるのも恐かった。

「けっこう早足なんですね
そんなに急いで歩くと疲れませんか?
ほら、そこのベンチで座って話をしませんか?」

よりによって、彼は街頭の灯りもない暗がりのベンチを指差した。

「いえ…あの…急ぐので…」

男からのナンパに慣れている女ならば、
ここは軽くいなしてバイバイできるのだろうけど、
男というものに対して免疫のない真弓は、彼に腕を取られて、やや無理矢理にベンチに座らされた。

『誰かが通りかかって欲しい…』

もし、誰かが通りかかったら大声で助けを求めようと思った。

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