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僕の母さん
第5章 サマーバケーション

「そうそう、あんた、水着も鞄に積めておきなさいよ」

「海水浴でもするの?」

「ううん、違うの。泊まる宿は温泉なんだけどね、
そこの大浴場は混浴なのよ」

「えっ?混浴!?
じゃあ、久しぶりに母さんの裸を見れるね」

「バカね、水着を何のために持っていくと思ってるの
女性は水着か湯浴着でいいらしいの」

「湯浴着?」

「バスタオルみたいなものを体に巻くらしいわ」

「そっちの方が色っぽいのに」

「いやよ。温泉から上がるときに湯に浸っているどこの誰とも知らないおじさんにお尻を見られるかもしれないじゃない」

そうか…温泉なんだから赤の他人とも一緒に入浴することになるのか…

「あ、でも僕は男だから海パンなんていらないんでしょ?」

「今は子供の裸を盗撮する変質者がいるのよ
あんたの包茎おちんちんをネットにさらされたくないでしょ?」

海パンを履いて温泉なんて、まるで温水プールみたいでいやだったけれど、母さんの言うように裸をネットにさらされるのはもっとイヤなのでド派手なトランクスタイプの海パンを鞄に詰め込んだ。

旅行当日、駅に向かうのだとばかり思っていたが、
母の真弓は呑気にコーヒーを飲んでいる。

「出掛けないと遅くなっちゃうよ?」

「佐智子の車で行くのよ
彼女がここまで迎えに来てくれるのよ」

てっきり新幹線か特急に乗れると思っていただけに
マイカー移動というのは少しガッカリした。
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