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第5章 サマーバケーション

子供たち二人が全裸になったことさえ気づかずに
母親たちは大人の会話に夢中になっていた。

「真弓はさあ、再婚する気はないの？」

「そりゃあ、達郎も男の子だし、これから母親には言えない悩みも出てくるだろうから、あの子の事を考えたら父親と呼ぶ存在が必要だとは思うけど…
でも、また浮気されたらと思うと二の足を踏んじゃうのよねえ…」

「私はその逆だわ…
ほら、母親の連れ子を再婚相手が陵辱するってニュースをよく目にするじゃない？
もし、再婚して、その相手にあの子が強姦されたらと思うと怖くてとてもじゃないけど再婚なんて無理だわ」

女の子を持つ母親としては、真弓とは、また違った悩みがあるのだと知った。

「でも私、これで枯れていくなんてまっびらごめんだからね、
再婚はしないにしても男とは仲良く遊んでいきたいのよ」

ほら、水泳のインストラクターの真壁くん。
私ね、あの子を落としてみようとモーションをかけてるの。

そのように語る佐智子の表情は、恋する乙女のように輝いていた。

私はどうだろう…
真弓は自身に重ねて考えてみた。
自分に男が出来たと知ったら、息子の達郎は嫉妬に狂うかしら…？
そんなことを考えて、真弓はハッとした。
私いま、息子の達郎を男として考えてしまっていた？
心の中に達郎という存在が自分の息子ではなく男としてカウントしていることに自分自身で驚いてしまっていた。