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僕の母さん
第7章 母、真弓の憂鬱
「なによなによ、せっかくのお盆休みに長距離運転して温泉に連れていってあげたというのに元気ないわね~」
お昼休みにお弁当のサンドイッチを食べていると、
訳知り顔で真弓のテーブルの隣に座って佐智子が真弓に元気がないって連呼した。
「そう?私はいたって普通よ
それよりもあんた、お昼はそれだけ?」
逆に真弓が彼女の体調を心配してしまう。
佐智子は大きな水筒に入ったミルクっぽいドリンクを
あまり美味しくなさそうに喉に流し込んでいた。
「プロティンよ、アスリートならこういうものを飲むのが常識でしょ?」
筋肉を保持するためにはそのようなものを飲むに越したことはないけれど、真弓はどうにもいかにも蛋白質ですっていう味が馴染めなかった。
「今はチョコレート味とかヨーグルト風味とか、ずいぶんと飲みやすくなったのよ」
そう言いながらも「私はプロティン本来の味が好きだからプレーンだけどね」と、とても不味そうに飲んでいる。
そこへ「忙しいにもほどがあるだろ」と
バスタオルで濡れた体を拭きながらスイミングのコーチを務めている真壁真一が真弓達の隣のテーブルに腰かけた。
とたんに佐智子がゆでダコのように真っ赤に顔を染めた。
『ああ、そうだったわね、この子、スイミングの真壁くんが好みだって言ってたわよね』
それにしてもわかりやすい子だわと
真弓は吹き出しそうになった。
女同士で二人っきりだと饒舌なのに好みのタイプの男性がそばにいるだけで乙女のように口をつぐんでしまった。

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