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妻女王様さくら
第1章 キャバクラごっこ

その週末、達郎はまた紙袋を抱えて帰宅した。
中にはワインレッドのドレスと、細いストラップの黒いハイヒール。
「……これも?」
さくらが袋を覗き込み、ヒールを持ち上げる。
「うん、やっぱりドレスにはヒールがないと」
光沢のあるエナメル。細いヒールは10センチ近くあり、履きこなすにはそれなりの慣れが必要だ。
「高いなぁ……こんなの歩けるかな」
「大丈夫、家の中だし」
数分後、さくらは鏡の前でヒールを履き、ゆっくりと立ち上がる。
細い足首に黒のストラップが絡み、爪先から膝までのラインが一段と際立った。
カツ、カツ、と床を叩く音が、達郎の耳に妙に響く。
「……どう?」
「……美しい」
ソファに腰掛けたまま、視線を逸らせない。
ただ歩いているだけなのに、彼女は舞台の上の女優のように輝いていた。
「似合ってる……本当に似合ってるよ」
「ふふ、そう? でもこれ、結構高かったでしょ?」
「……まあ」
「じゃあさ、この“キャバクラごっこ”やるときの衣装代、ちゃんと払ってね」
冗談半分のような口調。だが、達郎はなぜか断れなかった。
「……わかった」
翌週には、シルバーのオープントゥヒールと、スリットの入ったドレスが届く。
さらに翌週は、パール付きのパンプス。
クローゼットの一角は、瞬く間に「キャバクラごっこ専用」になった。
カツカツと響く音は、達郎にとって呼び水のようなものになっていた。
ある夜、達郎が「最近出費が増えてるな……」と漏らすと、さくらは笑顔のまま言った。
「じゃあ、この遊びやめる?」
心臓が跳ねる。やめる――そんな選択肢はありえなかった。
「……やめたくない」
「じゃあ、もっと頑張って稼いでね」
その時、達郎ははっきりと悟った。
自分は、もうこの“遊び”の虜だ。
そしてその中心にいるのは、美しい妻と、彼女が履くカツカツと鳴るヒールの音だった。
中にはワインレッドのドレスと、細いストラップの黒いハイヒール。
「……これも?」
さくらが袋を覗き込み、ヒールを持ち上げる。
「うん、やっぱりドレスにはヒールがないと」
光沢のあるエナメル。細いヒールは10センチ近くあり、履きこなすにはそれなりの慣れが必要だ。
「高いなぁ……こんなの歩けるかな」
「大丈夫、家の中だし」
数分後、さくらは鏡の前でヒールを履き、ゆっくりと立ち上がる。
細い足首に黒のストラップが絡み、爪先から膝までのラインが一段と際立った。
カツ、カツ、と床を叩く音が、達郎の耳に妙に響く。
「……どう?」
「……美しい」
ソファに腰掛けたまま、視線を逸らせない。
ただ歩いているだけなのに、彼女は舞台の上の女優のように輝いていた。
「似合ってる……本当に似合ってるよ」
「ふふ、そう? でもこれ、結構高かったでしょ?」
「……まあ」
「じゃあさ、この“キャバクラごっこ”やるときの衣装代、ちゃんと払ってね」
冗談半分のような口調。だが、達郎はなぜか断れなかった。
「……わかった」
翌週には、シルバーのオープントゥヒールと、スリットの入ったドレスが届く。
さらに翌週は、パール付きのパンプス。
クローゼットの一角は、瞬く間に「キャバクラごっこ専用」になった。
カツカツと響く音は、達郎にとって呼び水のようなものになっていた。
ある夜、達郎が「最近出費が増えてるな……」と漏らすと、さくらは笑顔のまま言った。
「じゃあ、この遊びやめる?」
心臓が跳ねる。やめる――そんな選択肢はありえなかった。
「……やめたくない」
「じゃあ、もっと頑張って稼いでね」
その時、達郎ははっきりと悟った。
自分は、もうこの“遊び”の虜だ。
そしてその中心にいるのは、美しい妻と、彼女が履くカツカツと鳴るヒールの音だった。

