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妻女王様さくら
第1章 キャバクラごっこ
羽田は都内の高級住宅街に建つ自邸で、一人静かにワインを傾けていた。豪奢な調度品、整えられた庭、すべてが彼の権力と財力を象徴しているはずなのに、今の羽田には空虚にしか見えなかった。
脳裏に蘇るのは、あの夜の光景だ。
――女王のように立ち上がり、全てを支配したさくら。
完璧な肉体と艶やかな微笑み、その存在は抗うことを許さない。
羽田(俺は…近藤さくらに敗北した。だが、なぜだ…こんなにも心地いい)
かつて従えていた遥香の姿も浮かぶ。従順で、命じれば何でも従った女。確かに便利で、可愛がるには十分だった。だが――。
羽田(違う。遥香では埋まらない。さくら女王様を崇拝する快感には勝てない。あの美しさ、あの支配こそ、俺の魂を震わせる)
羽田の呼吸は荒くなり、知らぬ間にグラスを強く握りしめていた。砕けそうになる寸前で手を放ち、深く息を吸った。
羽田(次の土曜日…必ず、必ず女王様にひれ伏す。俺の全てを捧げる。そうだ、それでようやく救われるんだ)
羽田は執務室に向かうと、机の奥から金庫を開いた。中には札束が詰まっている。ひとつひとつを数え、整え、最終的に三千万円を用意した。
羽田(これで足りるのか…いや、さくら女王様の美しさに値段などない。だが、せめてこの金で、少しでもお近くにいられるなら)
金を整然と鞄に詰めると、羽田の胸は高鳴った。
財力も地位も、女を従えてきた過去も、すべて霞む。残るのは、ひとりの男としての熱と崇拝だけ。
羽田(ああ…待ち遠しい。土曜日が早く来てほしい。さくら女王様、どうか俺を奴隷としてお受けください…)
羽田は豪邸の広間でひとり跪き、虚空に向かって祈るように呟いた。
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