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妻女王様さくら
第1章 キャバクラごっこ
リビングで、さくらがスマホをいじりながら楽しそうに笑っていた。
気になった達郎が声をかけると、さくらはさらりと言った。
「えー、浩一今日呼んだよ」
その一言に達郎の胸がざわめく。
浩一は達郎の職場の部下だが、今はこのキャバクラ部屋の“客”として呼ばれている。
キャバクラ部屋に入ると、浩一は既に気合十分でボトルを次々に注文していた。
テーブルに並ぶ高級シャンパンのラベルが煌めき、場の空気を熱くする。
浩一はさくらの笑顔を独占しようと、軽口を飛ばしながら手を握り、視線を絡ませる。
達郎は距離を置いて座り、嫉妬で胸を締めつけられながら二人の様子を見守る。
だがさくらは、達郎の視線を意識しているのか、わざと浩一に身を寄せるように接客していた。
「浩一さん、今日はいっぱい使ってくれたから、ご褒美」
そう言って、さくらは自分の髪の匂いがしっかり染みついたシュシュを外し、浩一の手にそっと渡す。
浩一の目が輝く。
達郎の心臓は脈打ち、耳まで熱くなる。
胸の奥で何かが崩れる音がした。
夜も更け、さくらはリビングに戻ると、何事もなかったかのように達郎を見つめた。
そして、さらりと言い放つ。
「浩一さん、上客だからアフターに行くね」
「……え?」
「浩一さん、出張で来てるから朝までホテルで過ごすの。あなたは明日、駅まで迎えに来なさい」
その声音には優しさではなく、命令の響きがあった。
達郎は堪えきれず、膝をつくような心境で呟く。
「……迎えに行かせてください、さくら女王様」
さくらはゆっくりと立ち上がり、ヒールをコツコツと鳴らしながら彼の前に歩み寄る。
口角を上げ、征服者の瞳で見下ろしながら一言。
「いい子ね。じゃあ、そうしなさい」
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