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久美子
第4章 流転
「魔理沙」という店は直ぐ見つかって、入ると櫻子が待っていた。

「植草さん、お久しぶりねぇ、元気だった?」
「あぁ、馴染みの店がなくなって、寂しくてね。ははは」
「・・・そうじゃないでしょう?久美子ママの事でしょう?」
「そうなんだ。会いたいけど会う術が無くて、お店に居た娘に
尋ねて回っているんだ。」
「・・・植草さん・・・ママに会う覚悟ある?・・・」

もう久美子は長くないという話で、とあるホスピスに入っていると言う。

「もう全身に癌が転移していて物凄く痩せてるの。ママはそんな姿植草さんに見せられなくて、LINEも電話もしなかったのよ。」

作ってくれた水割りが妙に苦い。

「それでも会いたい?」

頷いた自分にそっと住所が書かれた紙切れを渡した。

「ありがとう・・・行ってみる。・・・後悔はしたくないから・・・」
「うん、・・・勝気なママだから会いたくないと言うかもしれないけど、最期だもん・・・ね?」

次の日、タクシーでそのホスピスに出向いた。
着いたホスピスに事情を説明した。

「本来なら面会はもう・・・でも貴方ならいいかもしれません。」

 通された1人部屋は意外に明るく、窓から優しく日差しが入っていた。久美子はその中央のベッドに寝ていた。目を閉じて寝ている顔は頬がこけて、髪も白く薄くはなっていたがあの久美子だった。
介助員が久美子に声をかける。

「久美子さん?寝てた?・・・お客様が来たよ〜・・・判る?」

ゆっくり開いた目が自分を見る。焦点が合わないのか訝しげに見つめる。 が、久美子の目が大きく見開いた。


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