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久美子
第3章 転機
「風俗街はやっぱりヤクザが仕切ってるから、たまに来店するの。で、たまたま、私が旦那の相手したのね。」

最初はヤクザは怖い思ったが、そんな事はなかった。
普通のお客と変わりはない。ただ指が一本欠けていたのと背中に刺青が彫ってあった。
それが凄くカッコ良くて、自分から好きになってしまった。
旦那さんも器が大きくて久美子をすぐに自分の家に呼び
舎弟に

「今日からワシの嫁さん」

と言って泊まる事になった。舎弟は5人。朝から晩まで掃除洗濯食事等等、相撲部屋みたいだったと言う。最初は舎弟さんも年若い姉さんを小馬鹿にしていたが、馬鹿にされないように必死に働いたそうだ。その甲斐があって年上の舎弟からも

「姉さん」

と呼ばれる様になったらしい。

「あの時が1番真面目に働いたかもね」

久美子は笑う。

そして19歳になった日に
旦那と一緒に東京へ行く事になった。
行った場所は彫師の家。

「お前、ワシの彫り物がカッコイイと言っていたからお前にも彫ってもらおうと頼んだ」

と言う。正直、怖くてやりたくなかった。でも旦那の手前、嫌とは言えずに腹を決めて、彫る事した。
しかし、この痛さが尋常じゃないくらいの痛みで口に噛む割り箸が砕けそうになるくらい。
彫るのは1時間くらい。酷いのはそれから。彫った皮膚が腫れ上がり、熱が出る。腫れが引くとまた彫る。それの繰り返し。
白いシーツに吹き出す汗と血が混じって、終わると人の形になっていた。
完全に仕上がるのに半年以上かかった。最初は観音菩薩だけのはずだったが、久美子が足元に赤ん坊を入れて欲しいとお願いした。堕した子供への懺悔を込めてだそう。
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