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魅惑~甘く溺れる身体と心。
第3章 誘惑しますっ!

「やめて! あたしはもう大丈夫だから! お願い」
これ以上、唯斗さんに暴力を振るってほしくなかった。
相手を傷つけさせるような真似をさせたくなかったんだ。
それ以上手を出すと、自己防衛では済まされないような剣幕だったから――。
これはあたしの不注意。
もっとちゃんと気をつけておかなければいけないことだったのに、そうしなかったあたしも悪い。
「あたしも悪かったの……ちゃんと気をつけなかったから……だから」
「そうだね」
そう言った唯斗さんは地面に落ちていたあたしのカーディガンを拾い上げ、顔を背けたまま肩にかける。
そうかと思えばすぐに離れて、キャリーケースを手にした。
声はまだ不機嫌のまま。
ああ、あたしが唯斗さんを怒らせてしまった。
嫌われたのかな。
「――っつ」
じんわり涙が溢れ出す。
「おいで」
片手にキャリーケースを持って、もう片方の手があたしの手首を掴んだ。
有無を言わさない雰囲気のまま、あたしは唯斗さんに引っ張られるまま歩き始めた。
気分は最悪。
僅か数分前の気持ちとはまったく正反対のまま、あたしは唯斗さんのお家に行くんだ。
《誘惑します・完》

