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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第17章 ただ腕の中で漂う。

 あたしの身体に上着を掛けてくれた男性。
 このぬくもりは唯斗さん。
 あまりにも身体が疲労していて動けそうにない。

 自分が望んでしまったこととはいえ、おじさんに陵辱され、唯斗さんにもたくさん抱かれて何度もイってしまった。
 すでに限界を超えている。
 どこに向かおうとしているのかも判る。
 きっと、唯斗さんのお家――。


 虫の羽音と混じってガラゴロとキャスターが転がる音が聞こえる。
 唯斗さんの家から出るために持ち出したあたしのキャリーケースを、運んでくれているんだ。

 とても静かな夜。
 シンと静まり返ったその空間はとても居心地がいい。
 

トクン、トクン。
 あたしの心臓が規則的に鼓動する。
 耳孔に届くのは唯斗さんの静かな息遣い。
 このまま――。


 唯斗さんにおぶさって、ぬくもりを感じていたい。
 ずっと家に着かなきゃいいのに……。

 このまま何もかもを忘れてふたりきりになって、ずっと唯斗さんと一緒にいたい――。



 そう思うくらい、とても心地好かった。

 だけど、終わりは必ず訪れる。
 たとえ結果がどうであったとしても。
 始まりがある限りは終わりがあるんだ。
 そしてその終わりはすぐ目の前にあった。
 そのことに気がついたのは、玄関のドアを開く音がして後。

 未だに力を失ったままでいるあたしの身体はぐったりしたまま、目の焦点も合っていない。


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