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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第7章 それって嫉妬? 清楚系美人の恋敵登場。あたし負けないっ!

「唯斗さん――じゃなかった。叔父さんに頼まれたので……」
 都合の良い時に、自分の立場を利用するあたし。
 一向に引く気配がないあたしに、相手は機嫌が悪くなる一方だ。
「ちょっと!」

 あ、まずい。
 逆鱗に触れた?
 びくっと首を窄めて強張らせていると――。

「澪ちゃん……」
 聞いたことのある声に振り向けば、そこには今朝別れたばかりのスーツ姿の唯斗さんと、目鼻立ちがはっきりした茶髪の男の人。それから黒髪で短髪の、一際背の高い男の人がこっちに向かってきた。

「唯斗さん!」
 ちょっとほっとしたあたしは唯斗さんたちに向き直り、歩み寄る。
 一緒にいる二人の男の人はもしかして、電話で話した須藤さんと片桐さんだろうか。

「沢井(さわい)さん、澪ちゃんに何かあった?」
 唯斗さんが訊ねると、女の人は作り笑いを浮かべた。
「いいえ、困っているようだったから話を聞いていたのよ。森野くんに会えてよかったわね」
 あたしが黙っているのをいいことに、なんだかすっごい良いように話が進んでいく……。

「そうか、澪ちゃんのこと、見ていてくれたんだね、ありがとう沢井」
 唯斗さんは頭を下げて沢井さんにお礼を言った。
 この人の話を真に受けるなんて!

 むぅううっ!
 信じちゃだめなのにっ!
 心の中で怒るあたし。
 だけどこの場をぶち壊すのは唯斗さんの顔を潰すことになるし。
 あたしの心におかしな葛藤が生まれる。

「いいえ、いいのよ。可愛い姪っ子さんね、じゃあね」
 そう言って、彼女はカウンター席へ戻って行った。
 思ってもいないことを話すのが大人なら、そんなのあたしはなりたくない。


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