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ラブドール♡ 優莉花
第1章 第1章:ラブドール、輝く。
第10話



それは、まったく異なる種類の刺激だった。

今度は腰回りと太ももの内側を中心に、低音域の「うねるような」動き。
震えるのではなく、“這う”ような振動。

「くっ……」

彼女は、奥歯を軽く噛みしめる。
目は閉じない。顔も動かさない。
だが、体は――正直だった。

心拍は上昇し、呼吸が浅くなる。
汗が、うなじから背中へと静かに伝っていく。

 

「ぜったい……折れないから」

それは、ファンだけでなく、
自分自身に誓う言葉でもあった。

 



《20分経過。》

「よし、次のフェーズへ。上半身、ランダムモードで」

「了解。サイレント+ディレイ挿入、同時にいきます」

 

ステージの光が、一瞬だけ暗転する。

そして――

彼女の胸部に設置されたパッドが、ランダムに発火した。

“発火”とはいえ、熱ではない。
あくまで、リズムの狂気。
前触れのないノイズ振動。

「――ッ!!」

 

顔は保った。
だが、その代償として、彼女の爪先は静かにぎゅっと丸まっていた。

痛みでも、快感でもない。
「制御不能」という恐怖が、少しずつ足元をすくってくる。

 

「……まだ、60分も経ってないんだよね……」

 

無音の中、彼女はふと、気づいてしまった。

時間の感覚が…すでに、壊れかけていることに。
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