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ラブドール♡ 優莉花
第1章 第1章:ラブドール、輝く。
第9話

試練の幕開け



「……ッ」

わずかに、喉の奥で声が跳ねた。
けれど、それは音にはならなかった。

体の奥――背中から脇腹、腰、太もも、胸の下部。
張り巡らされた無数のパッドが、微細な振動を断続的に送り込んでくる。

まるで、音もなく滴り落ちる水滴のように。
静かに、だが確実に、彼女の意志の壁をノックし続けていた。

 

「……平気、平気…こんなもの」

脳内で、言葉を繰り返す。
表情筋は一切動かさない。
指先すらも動かさない。

 

が、その無音の中で――何かが変わる。

次の瞬間、振動のリズムが、ガラリと変わった。
ゆっくり、ゆっくりと波打つように――ずっと、ずっと内側に残る“余韻”を伴って。

それはまるで、呼吸と呼吸の合間を縫って、心臓の鼓動そのものをトレースするかのような波形。

「ッ……あ……」

吐息が、かすかに漏れそうになった。

でも、漏れなかった。
彼女は――止めたのだ。
自分の内側に芽生えかけた「感情の音」を。

 



《5分経過。現在、感情反応なし。》

モニター越しの制御室では、AIによる心拍と筋反応のログが淡々と記録されていた。

「順調だな……」

制御オペレーターのひとりがつぶやく。

「でも、ここからだろ。本番は」

となりの同僚が、別のボタンを押す。

カチリ。
わずかな音と共に、第二波が始まる。
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