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ラブドール♡ 優莉花
第1章 第1章:ラブドール、輝く。
第7話



カチッ。

背後の扉が閉まる音が、金属的に響いた。
その瞬間から、彼女は”舞台”の内側にいた。

壁も床も天井も、白と銀の光で統一された部屋。
何の装飾もない無機質な空間に、ただ一台、ハイバックのシートが中央に置かれていた。

そのシートの隣に立つのは、スーツ姿の男たち。
無言のまま、彼女の体へと静かに手を伸ばしてくる。

「……お願いします」

優莉花は一度だけ、軽く頭を下げた。
怯えはあった。だが、それ以上に“覚悟”が勝っていた。

彼女はもう、アイドルとしてのステージだけに立っているわけではなかった。
ファンの「希望」、あるいは「欲望」――そのすべてに向き合う存在として、ここにいる。

 

装着される器具の数々は、あまりにも無機質で、あまりにも丁寧だった。

太ももに巻かれるベルトのようなパッド。
背筋に沿うように当てられる薄い帯状のパネル。
鎖骨のすぐ下、胸部の上に軽く当てられる丸い吸盤のようなもの。

どれも医療器具に似ていたが、何かが違う。
それが何なのかは、彼女自身も知らされていない。

それでも、彼女の表情は変わらない。

「……これで全部ですか?」

スーツの男は頷く。口は開かない。

装置はすべて、リモート操作式。
どの機器が、何をどうするのか――優莉花は知らされていない。
だがそれこそが、彼女の「試練」を形づくる条件でもあった。

 

「制限時間は3時間。感情を表に出さないこと。それだけです」

男がようやく発した言葉は、事務的だった。
まるで、「医療実験に参加したボランティア」に読み聞かせるような冷たさ。

「……了解しました」

優莉花は深く呼吸し、胸に手を当てた。

自分で自分を落ち着かせるための儀式のように。
鼓動は、ほんのわずかに速かった。
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