この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
略奪貴公子
第2章 見初められた花嫁
レベッカの目が驚きで見開かれる。
それまで へ の字で固まっていた唇が少しだけ緩んだ。
“ 不満…?そんな の ”
そんなの贅沢だわ。
人が何をもって人生を理不尽と呼ぶかは、その人間の身分や好みに左右される。
わたしなんて別に……
こんな事、貴族の娘なら──。
「心まで貴族になるな……!」
「…っ…アドルフ…ッ」
レベッカの表情が崩れ始めた。
薄紫の瞳が潤んでいる。
「……だってッ…わたしは…!」
思わず顔を背けようとするも、頬に添えられた彼の手がそれを妨げた。
真正面から見つめられ、よけいに感情が高ぶってしまう。セーブが効かない、平静さを保てない。
それを見たアドルフはひとまず満足したのか。…彼の怒りが少しだけ引いたように見えた。
“ いくら不満を持ったって…っ ”
──不満を持ったところで何も解決には向かない。
だから自分を押し殺すのが一番いい。それしかわたしにはできないから…。
「……なら、あなたが助けてくれるの?」
「どうだろうな…」
ほらね、やっぱりそうでしょう?
試しに彼に問いかけても
彼は頷いてはくれなかったのだから。