この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
略奪貴公子
第10章 夫人が化ける夜
準備は終わった。
「…行きましょうか」
クロードはバルコニーへ彼女をいざなった。
美しい装飾が彫られた手すりの、その内のひとつに、なにやら布が巻き付けてある。
それは互いに結び合わされて一本の長い紐となり、ロープの代わりとして下まで垂れ下がっていた。
「おりるの…ですね」
──ゴクリ
死んでしまうような高さではないけれど…。
……ん?
クロードはいきなりレベッカを抱き抱えると、何も言わずに手すりの上に飛び乗った。
「…っきゃ!危な…」
「──静かに」
「……!」
ストンと足場がなくなり宙に浮いた瞬間を味わう。
怖がる彼女の腕がクロードの肩に回った。
彼は片手と足を使って器用に布に掴まると、スルスルと螺旋(ラセン)に円を描きながら地に降り立った。
「ハァ……ハァ……(ドキドキドキ)」
「クスッ……平気ですか?」
「え、ええ、…ところであの人…レオは?」
「すぐに追い付く」
マントの中に彼女を隠して走り出したクロード。
注意を払わなければ…見廻りの衛兵に見つかってしまう。
城の裏の、薄暗い林の方へ彼はレベッカを連れ出した。
時おりその場に身を屈めて動かなくなるのは、人の気配を感じたからだろうか。
レベッカも唾を飲み込み息をひそめた。