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略奪貴公子
第10章 夫人が化ける夜
「──此処でいい」
潜り込んだ林の中道を進んだところで、彼はようやくレベッカを解放してふぅと一息、息をつく。
そこで二人が待っていると…道の向こうからガラガラと音が聞こえてくる。
その音はすぐに近付いてきた。
「──…馬車?」
「レオです」
なんと馬を操っているのはレオだった。
「え…?いつの間に……!?」
“ さすがクロードの付き人ね…ただ者じゃなさそう ”
目の前で止まった馬車に二人は乗り込んだ。
レベッカはやっと緊張がとけて、へたりと椅子に身体をまかせる。
「スリリングでしたか?」
横から愉快な声がかけられる…!
「…泥棒になった気持ち」
「それは貴重な体験でしたね」
「もう二度としたくありません」
「──…」
「今日だけ…っ」
「…クスッ」
林をぬけて、橋を渡り、広大な公爵領を出る。
すると目的の領地が現れた。
今宵の舞踏会の会場、バイエル伯爵の城である。
モンジェラ家に匹敵するほどではないにしろ、その財力にかけては他の貴族を抜きん出るのがこのバイエル伯爵家だ。
きらびやかな贅沢を好むバイエル伯爵は、こうして定期的に舞踏会を開催している。
──ザッ
馬車が止まった。
「…着いたの?」
「おそらく」
外の景色が見えない。
門が開けられた音──
衛兵と話したあと再び動き出した馬車は鉄柵の内へ進み、会場に向かって走った。